シール剤の充填工程を人手から自動化したとき、実際に減った工数の話

生産技術の仕事を24年やってきて、いまは中小の製造現場向けに工程改善のお手伝いをしている藤堂と申します。
現役時代の12年間は、接着剤やシール剤、グリスといった高粘度材料の塗布・充填工程ばかり担当していました。
「シール剤の充填、そろそろ自動化したい」というご相談は本当に多いです。
ただ、実際に自動化してみると、減る工数は多くの方が想像しているところとは違う場所にあります。
今日はそのあたりを、現場で見てきた範囲で正直にお話しします。
目次
手作業のシール剤充填で、時間を食っていたもの
私が最初に自動化を担当したのは、部品の合わせ面にシール剤を一定量流し込む工程でした。
作業者3名が交代で担当していて、当時の私は「塗る時間そのもの」を短縮すれば効果が出ると思い込んでいました。
実際にストップウォッチを持って一日張り付いてみると、想定は外れていました。
塗布そのものにかかっていた時間は、工程全体の半分にも届きません。
残りを埋めていたのは、こういう作業です。
- 材料カートリッジの交換と、その都度の試し出し
- 塗布量がばらついたときの拭き取りと塗り直し
- 液だれや糸引きで汚れた治具の清掃
- 新しく入った作業者への付き添い指導
- 後工程で漏れが見つかったときの原因追跡
つまり、塗る作業ではなく、塗った結果のばらつきを人が吸収する時間が積み上がっていたわけです。
自動化して実際に減ったのは「やり直し」の時間
装置を入れたあと、いちばん数字が動いたのは塗り直しと清掃の工数でした。
体感で言えば、塗布そのものの時間は3割程度しか変わっていません。
一方で、拭き取りと塗り直しに使っていた時間はほぼ消えました。
人が触る回数が減るので、治具が汚れる頻度も落ちます。
もうひとつ大きかったのが、教育にかかる時間です。
手作業の頃は、一人前の塗布ができるようになるまで数週間は付き添いが必要でした。
装置化すると、覚えるのは材料のセットと画面操作なので、初日から戦力になります。
この「人に依存しない状態」を作れることが、省人化の本当の価値だと私は思っています。
経済産業省の2026年版ものづくり白書でも、製造業の就業者数は2025年時点で1,033万人と減少が続いており、収益力の高い企業ほど省力化・省人化投資に積極的だと指摘されています。
高粘度・フィラー入りのシール剤は、装置選びで結果が決まる
ここからが本題です。
シール剤の自動化がうまくいかない現場には、だいたい共通点があります。
材料の性質に装置が合っていないのです。
エアで押す方式には粘度の壁がある
塗布装置にはいくつか方式があります。
キーエンスのディスペンサの種類を解説したページでは、空圧方式、容積計量式、非接触方式などが整理されていて、プランジャー方式については「高粘度材料など流体の圧力が高い場合に有効」と説明されています。
エアで押し出す方式は導入しやすい反面、粘度が上がるほど吐出が安定しません。
エア圧は温度や配管条件で揺れるうえ、材料が硬いほどその揺れが吐出量の差になって出てきます。
フィラーが入ると、話はさらに難しくなる
シール剤には炭酸カルシウムやシリカといった充填材が入っていることが多いです。
産業技術総合研究所のフィラーに関する解説によると、フィラーは強度や機能性の向上、コスト低減のために樹脂やゴムに添加される粒子状の物質で、形状や粒度分布のばらつきが物性に影響するとされています。
現場で起きるのは、硬い粒子がポンプや流路を削っていくという問題です。
最初は正確に出ていた装置が、半年後には吐出量がずれてくる。
これは装置の故障ではなく、摩耗による必然です。
だからこそ、高粘度でフィラーを含む材料を扱うなら、耐摩耗性と吐出圧を最初から想定して設計された機種を選ぶ必要があります。
たとえば高粘度・高フィラー入り材料に対応したプランジャポンプ式ディスペンサの仕様を見ると、ポンプ内の耐圧を19.6MPaまで高め、対応粘度の上限を1,050,000mPa・sとしています。
参考までに、キーエンスの粘度の目安表ではグリセリンが約1,499mPa・sですから、その700倍近い硬さまで想定されている計算になります。
導入前に必ずやっておきたい2つのこと
装置の話をすると、すぐカタログ比較に入りたくなります。
ですが、順番として先にやるべきことが2つあります。
ひとつは、いま使っている材料の実サンプルでテストすること。
カタログの対応粘度はあくまで範囲であって、自社の材料で狙いどおり出るかは別問題です。
テスト設備を持っているメーカーであれば、持ち込みで試させてもらえます。
もうひとつは、削減対象の工数を事前に測っておくことです。
塗布時間だけでなく、清掃、塗り直し、教育、不良対応まで含めて記録する。
これをやっておかないと、導入後に効果を説明できず、次の投資が通らなくなります。
まとめ
シール剤の充填を自動化して減るのは、塗る時間ではなく、ばらつきを人が埋めていた時間です。
そしてその効果を出せるかどうかは、材料の粘度とフィラーの有無に装置が合っているかで、ほぼ決まります。
高粘度材料の工程は、うまく回り出すと本当に静かになります。
まずは自社の材料を持って、テストから始めてみてください。



